講師紹介

My history

❦ピアノを始めたきっかけ

まだ幼児の頃、家にあった母のピアノで遊んでいる私に、父が優しく「ピアノを習ってみる?」と聞きました。私は半分妙な予感と不安を感じながらも、「うん」と言ってしまいました。それが私の運命を決定づけるものとなりました。

その後、今もお元気でご活躍の中村順子先生の所へ通うことになります。そこで私の音楽の礎が築かれました。私は父の厳しい練習指導のもと、ひたすら演奏を専門に勉強してきました。時々、怒った父の手元から楽譜が飛んで来たりしました。技術を身に着けるためにはひたすら練習が必要、どうしたら上手になるか、どうしたら良い演奏になるのかを考えてきました。そのことに疑問を感じたり、迷うこともたくさんありました。

音大を卒業後、ピアノ講師をしながら、教えること、教育について勉強することになりました。教えることと演奏することは切り離せないことです。卒業後も自分の中でまだ演奏に納得がいかないこと、解決できていないことがたくさんありました。

❦恩師との出会い

そんな中、原田吉雄先生が主宰するピアニストグループを紹介されました。子どもの時から先生のことを知っていました。厳しいことで有名な先生でした。先生の娘さんと同級生で塾で一緒でしたので、お迎えの時に先生にお会いしたことがありますが、優しい笑顔が印象的でした。音楽に対してストイックな方だと感じこの先生なら自分の疑問を理解しアドバイスしてくださるのではないかと思いました。それで音楽の知人から紹介してもらいピアニストグループに参加することになったのです。月に一度メンバーが集まり、先生を中心に演奏する曲について批評し勉強します。そして年に二回演奏会が開催されていました。個人的にも原田先生にレッスンを受けるようになりました。

目に見えない音楽の世界で、何が語られているのか、そのためにどんな音が必要か、そしてその表現のためにどんな技術が必要か。ピアニッシモにも色んな音色があり、それぞれが意味を持つ。技術的にとても難しく、自分にはとても無理と思える領域もありましたが、先生の御指導のもと、自分が弾きたいと思っていた主にショパン、ベートーヴェン、ブラームス、バッハの作品に取り組みました。一回のレッスンは二時間以上に及びました。私は自分の音楽の疑問を晴らしたくて仕事で忙しくしんどい時も、レッスンを受けに行きました。受けた後でいつもちっとも進展していないことに気づきました。演奏は急に上手にならず、霧のなかを進むような時期もありました。ピアニストグループの演奏会では、ひどい演奏をするときや、上手くないと分かっていても弾かなくてはいけない時もありました。しかし演奏会に参加し、勉強しながら、完ぺきではないけれど、少しずつ悩みが解決し少しずつ音楽をする意味が分かるようになっていきました。演奏会では自分の演奏に涙してくれる人や目を輝かせて喜んでくれる人がいました。

それまではどこか自分の演奏は取るに足らない、大した価値はないと自己肯定感がかなり低めの私でしたが、努力し温めたものを表に出して聴いてもらった時に、それが大きな価値に変わるということを体験しました。自分だけの練習ではただ想像しているにすぎませんでしたが、そこに聞いてくれる人がいて、喜んでもらって、心から嬉しいと感じ、楽しく生き生きとした気持ちを感じました。

❦今、伝えたいこと

これまでも音楽は慰めを与え、喜びや励ましや力を与えてくれました。沈んだ気持ちを穏やかにしたりして心を変えることができる、人の心を動かし感動を与えることができるものです。このテクノロジーを追求する時代だからこそ、そんな生身の人間でしかできない心の交流も、大切な意味を持つのではないかなと思います。私にとっては、 その一つが音楽であり、そんな音楽が出来たらすごい、私ができるのならば誰でもできる、と考えています。

ただ諦めずに続けていくことが重要です。できないことはその楽しいことを知るための入り口なのだと思います。そして自分が楽しいなら、他の人も楽しいのではないかなと思うようになりました。

原田先生に、到達することは不可能かもしれません。でも先生に近づきつつ、教室に来てくれた人が、生活の中でその力を得て潤いのあるものとなるように、その心と心をつなぐ糸になれたら、と思っています。

思い出の一曲

❦ピアノソナタ第32番ハ短調op.111/ベートーヴェン

これは2009年6月26日に開催された第86回ピアニストグループの演奏会の曲です。私の亡くなった父が最後にベートーヴェンの32番のソナタを聞きたいと願っていたため、この機会に弾かせてもらいました。父は呼吸器をつけた体で二階のホール入口に登り、原田吉雄先生にお礼を言ってくれました。涙をぽろぽろ流しながら聴いてくれたそうです。父はその年の9月2日に亡くなりました。小さい時に父は私の手を握り、指で私の指をとんとんし、爪が伸びてると言っていました。亡くなった日も病床で手を握っていたら、指をとんとんしていました。

❦イスラメイ(東洋風幻想曲)/バラキレフ

2010年の年末に音楽仲間7人と一緒に、イタリアとドイツ、オーストリアに2週間の旅行に行きました。ミュンヘンでの大晦日、オペラを観た帰り道、ふわふわと楽し気に歩いていたところ、デパートの玄関先でピアノを持ち込んで演奏してる青年ピアニストがいました。友人が勝手に交渉し、私に「演奏していいよ」と言い、日本では考えられないのですが、お酒の勢いもあり、難曲と言われるこの曲を弾かせてもらいました。途中でやめようかと思いましたが、ピアノを貸してくれたドイツ人の青年が、続けて弾くように促すと、気付けばみるみる人が集まってきました。みんな楽しそうに聞いていて、中には缶にお金を入れてくれる人も現れました。警察が来ましたが、演奏が終わるまで待っていてくれて、終わったらみんながたくさん拍手をしてくれました。その雰囲気に感動したのか、一緒に行った友人の一人が泣いていました。この味わったことのない生の演奏会。ピアノを弾かせてくれた誠実な青年ピアニストとの出会い。とても貴重な体験でした。

❦3つの間奏曲op.117/ブラームス

これは2016年6月10日に開催された第95回ピアニストグループの演奏会の曲です。この演奏会はピアニストグループでの最後の演奏会となりました。大変厳しいことで知られていた原田吉雄先生ですが、その音楽に対する純粋な思いと熱心な指導によって、迷いさまよっていた私は救われました。先生の要求される音楽は、「遠くから鐘が聞こえてくるように」など、私には不可能と思われるほど難しいものでした。ピアノは様々な強弱で音色をつけますが、曲の要求する様々な情景、ほのかな希望を表す音も、深い悲しみの音も、曲の細部に亘ってそれらしく表現をすることは、大変骨の折れる難しいことでした。そのために改めて技術を身に着けることが必要で、何度もレッスンに行ってへこんでは練習しました。しかしこの演奏会が終わった時、会場で先生は涙ぐんで「良かった、嬉しかった。」と心から言ってくださいました。仕事をしながらの忙しい毎日の中で、練習時間は限られ、決して上手な演奏ではなく、完璧ではありませんでした。先生はその後体調を崩されグループは解散しましたが、この演奏会を思い出すと、切ない気持ちで胸が締め付けられます。

❦ラプソディインブルー/ジョージ・ガーシュイン

2019年3月17日に、友人のブラスバンドと一緒に弾かせていただきました。ガーシュインの曲を弾いているととても楽しいのです。音楽の中では、解放されて自由な気持ちになります。(お酒を飲んだみたいな?)私は「ウエストサイド物語」などの曲で知られる、バーンスタインの指揮&ピアノの演奏が好きです。不思議と楽しい気持ちになり感動があるのです。なかなか思うように弾けず、バーンスタインのようにはいきませんでしたが、たとえ上手でなくても、音楽はこんなふうに自分を解放し、心で弾くと、それが人にも伝わってお互い楽しい気持ちになるんだ、この気持ちを伝えたいこの楽しさを分かってほしい、と願いながら演奏しました。

ブラッシモ遊演奏会 RHAPSODY IN BLUE-YouTube

❦バイエル教本/演奏:エッシェンバッハ

バイエルは、日本ではよく使われる教本ですが、外国では使う人がいないとか、ヘ音記号がいつまでも読めないと否定的に言われることもあります。私は使い方次第だと思っています。この曲のCDを演奏しているのはエッシェンバッハという世界的に有名なドイツのピアニストです。この方のシューベルトの即興曲を聴いた瞬間「ああ良い!」と思いました。心から来る悲しみや温かさが伝わってきました。曲をちゃんと理解しそれをちゃんと伝えている。当たり前のことですがそれを理解するのはとても難しいのです。理解してもしなくても音は鳴りますが、根本的に聞こえてくる音楽は違います。すごいと思いました。そのエッシェンバッハがこども向けのバイエルの演奏をしています。またその表紙の絵は、ねむの木学園の方々が描いた絵です。ねむの木学園を創設された宮城まり子さんは、私が最も尊敬する人です。エッシェンバッハの演奏も、ねむの木学園の方々のあの絵も通じるものがあるのだなと思います。

| PROFILE

樋 口 公 子
(ひぐちきみこ)

❦プロフィール

樋 口 公 子(ひぐちきみこ)

桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部

演奏学科ピアノ科(東京都調布市)卒業。

中村順子氏,岡本美智子,有賀和子,原田吉雄氏に師事

国際音楽芸術ピアノコンクールグランプリ受賞

(国際音楽芸術協会主催)。

九州・山口音楽協会主催ドリカム・ピアノコンクール審査員。

九州・山口ジュニアピアノコンクール審査員。

飯塚新人音楽コンクールピアノ伴奏員

筑豊葬祭(株式会社セレモニー)ピアノ演奏者

特定非営利活動法人リトミック研究センター認定 ディプロマB講師

筑豊音楽愛好会に所属

2003年よりファンタジアピアノ教室を開設。

飯塚聖母幼稚園でも全園児さんを対象に元気にリトミックをしています。

飯塚幼稚園の課外レッスンでは、火曜日と水曜日にピアノとリトミックを教えています。