発表会への想い
ピアノは教えてもらったら解ると思っている方が多いと思います。でも本当は、自分で練習して見つけ出していくものだと思うのです。練習することで本当のおもしろさを見つけ、本質を理解していくのだと思います。そしてそのことに本気になることで上達します。ただ自分だけでは、本当には音楽を体験することができないと思うのです。ヨーロッパのドイツなどでは、クリスマスに子ども向けの劇が色んな劇場で催されるそうです。くるみ割り人形や、白雪姫や色んな子ども向けの物語があるそうですが、それは、劇を通して、雰囲気を体験する場であったり、マナーを学ぶ場であったり、大人への入り口になります。何より、参加する人たちが同じ感動を感じあい、共に時間を過ごすという貴重な体験の場であるのです。
ピアノも自分一人で弾くだけでは、その音楽を本当には体験することができません。発表会など人前で弾くことは、責任をもともないますし、そこまで追い込んで練習して、人前での演奏を体験して、初めて自分が出来ているのか、表現するために、あとどれくらい必要なのか、そのことにどんな意義があるのかが解ります。
例えば、こんな経験はありませんか?自分では取るに足らないと思っていることは、自分の中にだけ置いていると本当に取るに取らないもので終わります。しかしそれは自分ではそう思っても、外に出すことによって大きな価値に変わっていきます。自分の好きな人や尊敬する人に、自分はこんなだからだめと思っても、話してみると心が通じ合って、とても楽しい経験をしたりすることはないでしょうか。自分は才能がないと思う人がいますが、表に出していない自分だけの好きなことがいくつもあって、それをうまく表現できていないだけで、「伝えたい何か」を持っていることが大切だと思うのです。逆に何の価値もないように人から思われることでも、自分がそれを表現して形にすることで、人は感動し、その価値を評価します。
それを表現するには技術は必要です。そして練習によって見つけていかないといけません。そして本当の面白さを理解します。そこは孤独な作業ですが、あとはそれをみんなに聴いてもらって、楽しんで演奏すればよいと思うのです。これからも発表会の場がその体験の場であればと思っています。